衣装への想いを大切にする
“フリマ感覚”の販売システム

決して広くはない店内に、ハンガーに吊るされたコスプレ衣装がずらりと並ぶ。扱うのは新品ではなく、手作り品や既製品をカスタマイズした一点モノ。この仮装堂は、「レンタルハンガー」と称してお客さまから衣装を預かり委託販売しているお店なのだ。価格はお客さま自身がつけ、売れたらお店に手数料を支払うシステム。“フリマ感覚”で1着から気軽に衣装を売れるというわけだ。「最近は安く既製品が手に入るようになりましたが、コスプレイヤーそれぞれのこだわりを叶えるには、やはり手作りやカスタマイズが必要になります。でもそうした衣装は値段がつきにくく、買い取ってくれる場所が多くないんです」と工藤さん。聞くと、工藤さん自身もコスプレイヤー。衣装へのこだわりや想いが痛いほどわかっているのだろう。「衣装の譲渡は個人同士で以前から行われていたので、売り手と買い手を結びつけるお店があればいいな、と思ったのがここを始めたきっかけです」（工藤さん）キャラクター愛の詰まった衣装を同じくコスプレを愛する別のお客さまが買う。素晴らしい循環がこの小さなお店で起こっている。

かゆい所に手が届く！
コスプレイヤーの「想い」を叶える駆け込み寺

仮装堂では衣装のお直しとウィッグカットも行っていて、特にお直しはイベントが多い10月、11月はすぐに依頼で埋まってしまうそうだ。「他店で買った衣装、ウィッグでも大丈夫です。自分の体型に合わせたり、こだわりのアレンジを加えたい、という方の相談に乗っています」（工藤さん）実は工藤さん、服飾を学んだ経験からお直しはお手のもの。またウィッグカットはプロの美容師と提携し、週2回店内で行なっている。「既製品のウィッグも、キャラクターが限られているんですよね…」と工藤さん。そうそう、主人公よりその友達や敵役など、いわゆる“脇役”が好きな人だって多いだろう。そういう場合はお客さまが持ち込んだシンプルな形のウィッグをカットやカラーでアレンジするのだとか。確かに、そこまでのアレンジは素人では難しい。「最近は情報過多で、上級者のクオリティを目指して挫折してしまう初心者も多いんです。まずは手軽にできるアレンジからアドバイスしています」と話す工藤さんを目当てにリピーターも増えている。お客さまにとって工藤さんは頼れる存在なのだ。

何歳でも楽しめる！
コスプレカルチャーをもっと盛り上げたい

2013年の開業から6年、池袋の変化、特に近年のオタクカルチャーの盛り上がりを工藤さん自身も感じている。「最近は池袋でも“オタク”であることを隠さない人が増えていますね。“オタク”が元気になったなと思います」（工藤さん）その背景には初心者でも参加しやすいコスプレイベントが増えたことと、SNSで好きなことを発信し共感してもらえる時代になったことがあり、今、コスプレのハードルがどんどん下がっているのだとか。しかし一方で、30歳代でコスプレをやめてしまう人も多いそうだ。「大人だからこそチャレンジできるキャラクターもあるので、もったいないですね。コスプレは自分じゃない何かに変身できることが魅力。もっと上の世代の方にも楽しんでほしいです」（工藤さん）

お店には外国からのお客さまも訪れ、常連さんもできた。中国のとあるSNSでは仮装堂が紹介されているらしい。工藤さんの今後の夢を聞いてみた。「海外の人でもコスプレを楽しめるイベントを開催してみたいです。あと、もう少し大きなお店にしたい！」小さなお店に、無限の可能性と一人一人のコスプレイヤーの想い、そして工藤さんのコスプレ愛が詰まっている。