五感で感じる絶景旅~日本の魅力を訪ねて~

ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「砂岩の割石でできた壁柱が並ぶロビー」

▲ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「砂岩の割石でできた壁柱が並ぶロビー」

有名建築家が手掛けたプリンスホテル特集

ロビーに差し込む光、手すりのふくらみ、天井を見上げたときの余白。
建築の魅力は、写真で眺めるだけでは伝わりきりません。

朝から夜まで、時間の移ろいとともに味わえるのが、泊まれる名建築のぜいたくです。
プリンスホテルには、昭和を代表する建築家たちが設計を手掛けたホテルが、いまも現役のまま残されています。

この記事では、有名建築家が手掛けたプリンスホテルを特集します。
それぞれ違った魅力があるため、歴史あるホテルに興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

この記事の要約

  • 村野藤吾、黒川紀章、丹下健三、池原義郎が手掛けたプリンスホテルを建築家ごとにご紹介
  • ザ・プリンス 箱根芦ノ湖の円形設計と、村野藤吾がこだわり続けた光と影を解説
  • 下田プリンスホテルの全室オーシャンビューと、海岸の斜面を生かした黒川紀章の設計を特集
  • ザ・プリンス 京都宝ヶ池のドーナツ型建築と、びわ湖大津プリンスホテルの529室レイクビューもご紹介

神奈川、埼玉、静岡、長野、滋賀、京都

こんな方におすすめ!

  • 歴史的建造物
  • ホテルステイ
  • 有名建築家
  • 村野藤吾
  • 黒川紀章
  • 丹下健三
  • 池原義郎

更新日:2026/9/11

今回の旅の目的地

プリンスホテルの設計に携わった名建築家

  1. 一木一石も動かさずに建てた、自然との調和

    1村野藤吾(ザ・プリンス 箱根芦ノ湖)

    • ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「芦ノ湖越しに望む本館の外観」

      ▲ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「芦ノ湖越しに望む本館の外観」

    村野藤吾は1891年に佐賀県で生まれ、早稲田大学理工学部建築学科で学んだ建築家です。
    モダニズム建築から数寄屋建築まで、多様な意匠と素材を使い分け、家具や照明のデザインにも才能を発揮しました。

    代表作は宇部市渡辺翁記念会館、世界平和記念聖堂、日本生命日比谷ビル。1967年には文化勲章を受章しています。

    プリンスホテルでは、ザ・プリンス 箱根芦ノ湖、伊豆長岡温泉 三養荘、ザ・プリンス 京都宝ヶ池の3ホテルに村野建築が残されています。
    なかでも1978年に開業したザ・プリンス 箱根芦ノ湖は、建設地に密生していた樹木を一本も切らずに設計されたことで知られています。

    ザ・プリンス 箱根芦ノ湖

    住所
    〒250-0592 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根144
  2. 最晩年にたどりついた、曲線の建築

    2村野藤吾(ザ・プリンス 京都宝ヶ池)

    • ザ・プリンス 京都宝ヶ池公式Webサイトより「洛北の緑に包まれたドーナツ型のホテル棟」

      ▲ザ・プリンス 京都宝ヶ池公式Webサイトより「洛北の緑に包まれたドーナツ型のホテル棟」

    • ザ・プリンス 京都宝ヶ池公式Webサイトより「9mの天井高をもつ楕円形の宴会場」

      ▲ザ・プリンス 京都宝ヶ池公式Webサイトより「9mの天井高をもつ楕円形の宴会場」

    ザ・プリンス 京都宝ヶ池は、村野藤吾の最晩年の作品として知られています。
    開業は1986年10月。村野が生涯をかけて培った多彩で独創的な技法が、建物のそこかしこに込められています。

    中庭を囲んで円を描くホテル棟、ロビーや客室のインテリア、日本庭園に建つ数寄屋造りの茶寮。
    細部にいたるまで、優雅な曲線美にあふれた空間が広がります。

    2026年には開業40周年を迎え、村野建築の魅力を伝える特別な企画も行われています。

    ザ・プリンス 京都宝ヶ池

    住所
    〒606-0015 京都府京都市左京区岩倉幡枝町1092-2
  3. 庭と一体になった、現代数寄屋の到達点

    3村野藤吾(伊豆長岡温泉 三養荘)

    • 伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「本館と新館の間に広がる3,000坪の日本庭園」

      ▲伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「本館と新館の間に広がる3,000坪の日本庭園」

    伊豆長岡温泉 三養荘の新館は、村野藤吾が手掛けた現代数寄屋建築です。
    竣工は1988年(昭和63年)。

    広い敷地のなかに客室がそれぞれ独立して建ち、一室ごとに専用の庭を持ち、それらが渡り廊下でつながれています。
    ひとつの建物に部屋を並べるのではなく、庭のなかに小さな家を点在させる構成です。

    本館は1929年(昭和4年)、岩崎弥太郎の長男・久彌の別荘として建てられたもの。
    2017年6月には国の登録有形文化財に登録されました。

    本館と新館のあいだには、庭師・小川治兵衛が手掛けた3,000坪の日本庭園が広がります。

    伊豆長岡温泉 三養荘

    住所
    〒410-2204 静岡県伊豆の国市ままの上270
  4. 地形と向き合って生まれた、昭和のリゾート建築

    4黒川紀章(下田プリンスホテル・軽井沢プリンスホテル イースト)

    • 下田プリンスホテル公式Webサイトより「V字型に伸びる客室棟を真上から望む」

      ▲下田プリンスホテル公式Webサイトより「V字型に伸びる客室棟を真上から望む」

    • 軽井沢プリンスホテル イースト公式Webサイトより「張り出した屋根が印象的な外観」

      ▲軽井沢プリンスホテル イースト公式Webサイトより「張り出した屋根が印象的な外観」

    黒川紀章は1934年に生まれ、都市や建築を生き物のように更新していくメタボリズム運動の中心人物として知られる建築家です。

    プリンスホテルでは、下田プリンスホテルと軽井沢プリンスホテル イーストの設計を手掛けました。
    どちらも1973年の開業です。
    下田では海岸線に迫る急斜面の岩場を、軽井沢では木立に囲まれた高原の地形を、それぞれ削らずにそのまま生かしています。

    軽井沢プリンスホテル イーストは、大きく張り出した屋根が印象的な一棟。
    ベッドに横になったまま軽井沢の緑を切り取る大きなピクチャーウィンドウが設けられています。

    下田プリンスホテル

    住所
    〒415-8525 静岡県下田市白浜1547-1

    軽井沢プリンスホテル イースト

    住所
    〒389-0193 長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢1016-75
  5. 湖に向かって弧を描く、世界が認めた建築家

    5丹下健三(びわ湖大津プリンスホテル)

    • びわ湖大津プリンスホテル公式Webサイトより「びわ湖畔にそびえるタワーと大津のまちなみ」

      ▲びわ湖大津プリンスホテル公式Webサイトより「びわ湖畔にそびえるタワーと大津のまちなみ」

    丹下健三は、日本人としていち早く世界で活躍した建築家です。
    都市のシンボルとなる建築を数多く手掛け、その名は国内にとどまらず広く知られています。

    びわ湖大津プリンスホテルは、その丹下が湖畔に建てた38階建てのタワー。
    びわ湖に向かってゆるやかな弧を描く外観は、空と湖の色を映しながら、時間ごとに表情を変えていきます。

    529室ある客室はすべてびわ湖に面しており、高層階には西洋料理と日本料理のレストラン、ブッフェダイニング、スカイラウンジが並びます。

    びわ湖大津プリンスホテル

    住所
    〒520-8520 滋賀県大津市におの浜4-7-7
  6. 多摩湖畔に建つ、漢詩の一節を名に持つ宿

    6池原義郎(中国割烹旅館 掬水亭)

    • 中国割烹旅館 掬水亭公式Webサイトより「緑に包まれた掬水亭の外観」

      ▲中国割烹旅館 掬水亭公式Webサイトより「緑に包まれた掬水亭の外観」

    池原義郎は、早稲田大学で長く教壇に立ちながら設計を続けた建築家です。
    狭山丘陵に囲まれた多摩湖のほとりに建つ「中国割烹旅館 掬水亭」は、その池原が手掛けた一軒。

    三角屋根を重ねた洋風のシルエットに繊細な鉄骨をあしらい、湖畔の自然に調和しながらも確かな存在感を放っています。
    その造形は館内にも貫かれ、多摩湖を望む中国料理レストランでは、折り重なる三角形の天井が空間に律動を与えています。

    1990年9月の開業以来、全客室から多摩湖の眺めを楽しめる造りが受け継がれてきました。
    宿の名は、唐の詩人・于良史が詠んだ「掬水月在手」の一節に由来すると伝えられています。

    中国割烹旅館 掬水亭

    住所
    〒359-1145 埼玉県所沢市山口2942

ザ・プリンス 箱根芦ノ湖

建築家・村野藤吾

  1. 芦ノ湖畔に建つ本館

    1村野藤吾が晩年に手掛けた円熟の傑作

    • ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「秋の芦ノ湖畔に建つ本館」

      ▲ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「秋の芦ノ湖畔に建つ本館」

    ザ・プリンス 箱根芦ノ湖が開業したのは1978年のことです。
    富士箱根伊豆国立公園のなかにあり、富士山を望む芦ノ湖畔に建っています。

    本館の設計を手掛けたのは、当時87才の村野藤吾。1984年に93才で亡くなるまで現役を貫いた建築家の、晩年を代表する一軒です。

    村野が何より重んじたのは「自然との完璧な調和」でした。
    「一木一石たりともみだりに変更してはならない」という信念のもと、建設地に密生していた樹木は一本も伐採されていません。
    木々のあいだに建物を差し込むように設計した結果、湖畔の風景と一体になった姿が生まれました。

    本館の平面はゆるやかな円を描き、館内を歩くと廊下が曲がるたびに窓の外の景色が移り変わります。
    ゆるやかに移り変わる箱根の四季を、建築そのものとともに感じられるホテルです。

  2. 砂岩の割石でできた壁柱

    2村野がこだわり続けた「光と影」

    • ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「砂岩の割石でできた壁柱のロビー」

      ▲ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「砂岩の割石でできた壁柱のロビー」

    村野建築を語るうえで欠かせないのが、光と影の扱いです。
    ロビーに立つ壁柱は、砂岩の割石を積み上げてつくられています。

    ざらりとした石の表面に光が当たると、凹凸のひとつひとつが濃い影を落とします。
    朝はやわらかく、昼は深く、夕方には赤みを帯びる。
    同じ場所に座っていても、時間とともに違う陰影が壁を流れていきます。

    照明で均一に照らすのではなく、素材そのものに光を受けとめさせる。
    華やかで美しい装飾の内観と、石が生む静かな陰影。

    その両方をひとつの空間に同居させたところに、村野藤吾の真骨頂があります。
    泊まってはじめて気づける変化です。

  3. 螺旋階段とメインダイニング

    3彫刻のような曲線と和洋が交わる素材

    • ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「うねるような曲線を描く螺旋階段」

      ▲ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「うねるような曲線を描く螺旋階段」

    • ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「インド砂岩と有田焼の染め付けタイルが彩るメインダイニング」

      ▲ザ・プリンス 箱根芦ノ湖公式Webサイトより「インド砂岩と有田焼の染め付けタイルが彩るメインダイニング」

    ロビーには、うねるような曲線を描く螺旋階段があります。
    手すりのふくらみ、踏み板の重なり、見上げたときの渦。
    どこから眺めても、建築というよりひとつの彫刻のようです。

    階段まわりの空間はダイナミックに広がり、上から落ちる光が曲面をなぞっていきます。

    メインダイニング「ル・トリアノン」の内壁には、インド砂岩と有田焼の染め付けタイルが用いられました。
    石とやきものという異なる素材を組み合わせ、和と洋のあいだに独自の表情をつくり出しています。

    ロビー、階段、食事の席。
    どこにいても、村野藤吾のこだわりを感じられます。

    ザ・プリンス 箱根芦ノ湖

    住所
    〒250-0592 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根144

中国割烹旅館 掬水亭

建築家・池原義郎

  1. 湖畔に建つ外観

    1多摩湖畔に重なる三角屋根

    • 中国割烹旅館 掬水亭公式Webサイトより「多摩湖越しに望む外観」

      ▲中国割烹旅館 掬水亭公式Webサイトより「多摩湖越しに望む外観」

    東京都心から電車で1時間ほど。狭山丘陵に抱かれた多摩湖のほとりに、「中国割烹旅館 掬水亭」は建っています。

    設計を手掛けたのは、早稲田大学で長く教壇に立ちながら数多くの建築を残した池原義郎。
    三角屋根をいくつも重ねた洋風のシルエットに、繊細な鉄骨をあしらった造形が特徴です。
    湖畔の樹林に溶け込みながらも、水面越しに見上げるとくっきりとした輪郭が浮かび上がります。

    開業は1990年9月。西武園ゆうえんちや山口観音にも近く、都心から気軽に足を延ばせる湖畔の宿として親しまれてきました。

  2. 湖を望む中国料理レストラン

    2折り重なる天井がつくる食の空間

    • 中国割烹旅館 掬水亭公式Webサイトより「三角屋根が重なる中国料理レストランの店内」

      ▲中国割烹旅館 掬水亭公式Webサイトより「三角屋根が重なる中国料理レストランの店内」

    外観の三角屋根は、そのまま館内の表情にもなっています。
    多摩湖を望む中国料理レストランでは、折り重なる三角形の天井が空間に律動を与えています。

    面の向きが変わるたびに照明の光が角度を変え、天井そのものが陰影の模様をつくり出します。
    窓の外に目を移せば、水面と対岸の緑が一枚の絵のように広がります。

    提供されるのは、上海料理をもとにした本場の味わい。
    建築とともに食事を楽しむという体験が、この宿ならではのかたちで成り立っています。

  3. 湖に向く和の客室

    3全室から多摩湖を望む客室

    • 中国割烹旅館 掬水亭公式Webサイトより「多摩湖を望む和室の客室」

      ▲中国割烹旅館 掬水亭公式Webサイトより「多摩湖を望む和室の客室」

    客室はすべて多摩湖に向けて配置されています。
    障子を開けると、大きな窓いっぱいに水面と対岸の樹林が広がります。
    畳に腰を下ろした低い視線から眺める湖は、立って見るときとはまた違う静けさをたたえています。

    宿の名は、唐の詩人・于良史が詠んだ「掬水月在手」の一節に由来すると伝えられています。
    水を掬えば、手のなかに月が宿る。
    湖に正対する客室で過ごす時間は、その一句をそのまま体験するようなひとときです。

    館内には湖を望む浴場も備わり、湯に浸かりながら水辺の景色を楽しめます。

    中国割烹旅館 掬水亭

    住所
    〒359-1145 埼玉県所沢市山口2942

伊豆長岡温泉 三養荘

建築家・村野藤吾

  1. 庭を持つ新館の客室

    1渡り廊下でつながる独立した数寄屋

    • 伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「村野藤吾が設計した新館の客室」

      ▲伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「村野藤吾が設計した新館の客室」

    • 伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「窓の外に庭の緑を望む和室の客室」

      ▲伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「窓の外に庭の緑を望む和室の客室」

    1988年(昭和63年)に竣工した新館は、村野藤吾が数寄屋の技法を現代に翻訳した一棟です。

    広い敷地のなかに客室がそれぞれ独立して建ち、一室ごとに専用の庭を持ちます。
    そしてそれらが、渡り廊下でゆるやかにつながれています。

    ひとつの建物に部屋を並べるのではなく、庭のなかに小さな家を点在させる。
    数寄屋建築の考え方を、宿の造りそのものにまで広げた構成です。

    障子を開ければ、目の前にあるのは自分の部屋だけの庭。
    木枠の大きな窓が庭の緑を切り取り、季節の移ろいがそのまま室内に届きます。

  2. 玄関棟と日本庭園

    2民家の造形を取り入れた素朴で力強い佇まい

    • 伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「民家の造形を取り入れた玄関棟」

      ▲伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「民家の造形を取り入れた玄関棟」

    訪れてまず目に入るのが、玄関棟です。
    村野藤吾はここに、民家の素朴で力強い造形を取り入れました。
    深い軒が影を落とし、石畳の先に土間が続きます。

    129畳敷きの大広間「雄峰」には、格式の高い空間に用いられる小組格天井が張られています。
    細かな格子が整然と重なる天井は、見上げるほどに手仕事の密度が伝わってきます。

    本館と新館のあいだに広がるのは、3,000坪の日本庭園。
    作庭を手掛けたのは、京都の名庭を数多く生み出した庭師・小川治兵衛です。

    その本館は1929年(昭和4年)、岩崎弥太郎の長男・久彌の別荘として建てられたもの。
    2017年6月には、国の登録有形文化財に登録されています。

  3. 全室かけ流しの温泉

    3庭を眺めながら浸かる伊豆長岡の湯

    • 伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「緑に囲まれた温泉大浴場」

      ▲伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「緑に囲まれた温泉大浴場」

    • 伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「客室で楽しめるかけ流しの温泉」

      ▲伊豆長岡温泉 三養荘公式Webサイトより「客室で楽しめるかけ流しの温泉」

    三養荘の客室は、全室がかけ流しの温泉付きです。
    時間や混雑を気にせず、好きなタイミングで湯に浸かれます。

    大浴場は、深い軒の下に湯船を据え、岩と苔に囲まれた庭へ開かれています。
    湯に肩まで沈めて顔を上げれば、視界に入るのは木々の緑と、水面に映る光だけ。

    建築が風景を切り取り、湯がその風景のなかに人を置く。
    村野藤吾が庭と建物を一体で考えたことの意味が、湯に入っているあいだにいちばんよく伝わってきます。

    伊豆長岡温泉 三養荘

    住所
    〒410-2204 静岡県伊豆の国市ままの上270

下田プリンスホテル

建築家・黒川紀章

  1. 太平洋に正対する客室

    1徹底された全室オーシャンビュー

    • 下田プリンスホテル公式Webサイトより「海を望むツインルーム」

      ▲下田プリンスホテル公式Webサイトより「海を望むツインルーム」

    • 下田プリンスホテル公式Webサイトより「太平洋を見渡す客室からの眺め」

      ▲下田プリンスホテル公式Webサイトより「太平洋を見渡す客室からの眺め」

    下田プリンスホテルの客室は、片廊下型の配置がとられています。
    廊下を建物の内側にまとめ、客室をすべて海側に並べる。
    その徹底によって、全室から白浜海岸と太平洋を望めるようになりました。

    客室には広い開口部とバルコニーが設けられ、部屋ごとに角度をずらして雁行させることで、隣室の視線が気にならないよう配慮されています。

    白と青を基調としたインテリアが、窓の外に広がる海と白砂に呼応します。
    朝は水平線から昇る光、夜は絶え間なく届く波の音。

    海に正対するという一点に設計のすべてを注いだ、オーシャンフロントの客室です。

  2. V字型に伸びる客室棟

    2海岸の斜面を生かした設計

    • 下田プリンスホテル公式Webサイトより「朝日に染まる白浜海岸と崖の上に建つホテル」

      ▲下田プリンスホテル公式Webサイトより「朝日に染まる白浜海岸と崖の上に建つホテル」

    敷地は海岸線にきわめて近く、北と南を小高い山に挟まれた急斜面の岩場でした。
    黒川紀章が選んだのは、斜面を削って平らにするのではなく、地形をそのまま受け入れる方法です。

    建物は2つの山に抱かれるように置かれ、西側に構えたエントランスを要として、北東と南東へ客室棟がV字型に伸びていきます。

    そのため、エントランスは1階ではなく2階に設けられました。
    訪れた人は、入り口から一段ずつ海へ下りていくことになります。

    構造は鉄筋コンクリート造の地上5階建て。
    地形と建築が組み合わさって生まれた、1973年竣工のリゾート建築です。

  3. 白と青の館内

    3開業から変わらないレトロモダンな空間

    • 下田プリンスホテル公式Webサイトより「ガラス張りの階段室が印象的なエントランス」

      ▲下田プリンスホテル公式Webサイトより「ガラス張りの階段室が印象的なエントランス」

    • 下田プリンスホテル公式Webサイトより「白と青を基調にした館内」

      ▲下田プリンスホテル公式Webサイトより「白と青を基調にした館内」

    外観を特徴づけているのは、ガラス張りの階段室と円筒形のエレベーターシャフトです。
    白い壁面から突き出した円筒が、建物に軽やかなリズムを与えています。

    館内に足を踏み入れると、白と青でまとめられたインテリアが迎えてくれます。
    直線と曲線を組み合わせた造作、開放感のある吹き抜け。
    いまの目で見るとかえって新鮮に映る意匠が、開業当時のまま受け継がれています。

    白珠のような砂浜に向かって翼をひろげる外観と、レトロモダンな館内。
    昭和のリゾートホテルが目指した明るさと開放感を、そのまま体感できる一軒です。

    下田プリンスホテル

    住所
    〒415-8525 静岡県下田市白浜1547-1

びわ湖大津プリンスホテル

建築家・丹下健三

  1. 曲面を描く外観

    1空とびわ湖を映し出すミラーガラス

    • びわ湖大津プリンスホテル公式Webサイトより「空を映す曲面のガラス外観」

      ▲びわ湖大津プリンスホテル公式Webサイトより「空を映す曲面のガラス外観」

    びわ湖のほとりに、ゆるやかな弧を描いてそびえる38階建てのタワー。
    びわ湖大津プリンスホテルの外観を覆っているのは、鏡のように景色を映すガラスです。

    湖に向かって曲面を描く壁面には、朝は淡い青が、昼は白い雲が、夕方には茜色の空が映り込みます。
    同じ建物なのに、訪れる時間によってまったく違う色に見える。
    湖岸の道から見上げるたびに表情が変わるのは、この曲面とガラスの組み合わせによるものです。

    設計を手掛けたのは、日本人としていち早く世界で活躍した建築家・丹下健三。
    まわりに高い建物のない湖畔だからこそ、建築そのものが空と水を映す装置になっています。

    湖上を行く遊覧船から眺めれば、タワーが水面に長く伸びる姿も楽しめます。

  2. 高層階のレストランとラウンジ

    2都市的な空間とリゾートの開放感の両立

    • びわ湖大津プリンスホテル公式Webサイトより「びわ湖を望む高層階のレストラン内観」

      ▲びわ湖大津プリンスホテル公式Webサイトより「びわ湖を望む高層階のレストラン内観」

    38階建てという高さは、湖畔のリゾートホテルとしては異例です。
    低く水平に広がる建物を選ばず、丹下健三はあえて垂直に伸びるタワーを選びました。
    足元の敷地を大きく空けることで、湖と建物のあいだに広い余白が生まれます。

    高層建築ならではの都会的な端正さと、湖畔のリゾートならではの開放感。
    相反するふたつが、1棟のなかで両立しています。

    高層階の36階から38階には、西洋料理と日本料理のレストラン、ブッフェダイニング、スカイラウンジが集まります。
    窓際の席につけば、眼下にびわ湖が広がり、視線を上げれば対岸の山なみ。
    館内は都市のホテルのような落ち着きを保ちながら、窓の外はどこまでも湖です。

    JR京都駅から大津駅まで2駅9分という近さも、この両立を支えています。

  3. 全室レイクビューの客室

    3529の客室から眺めるレイクビューへのこだわり

    • びわ湖大津プリンスホテル公式Webサイトより「全室レイクビューでびわ湖を一望できる客室」

      ▲びわ湖大津プリンスホテル公式Webサイトより「全室レイクビューでびわ湖を一望できる客室」

    びわ湖大津プリンスホテルの客室は529室。
    その全室が、びわ湖に面しています。
    湖側と反対側で眺めが分かれるつくりにせず、すべての客室を湖へ向ける。
    ゆるやかな弧を描く平面は、この一点のために選ばれたかたちでもあります。

    窓辺に立てば、広がるのは遮るもののないパノラマ。
    朝は湖面に昇る光、昼は行き交う船、夜は対岸に連なる灯り。
    四季折々の絶景が、窓一面に切り取られます。

    低層階・高層階を問わず、客室の窓からはびわ湖の水面の先に連なる山なみまで見渡せます。
    客室にはジャパニーズモダンルームやスイートルームなど、広々としたタイプも用意されています。

    どの部屋を選んでも湖が正面にある。
    その当たり前を実現するために、建物のかたちから決められたホテルです。

    びわ湖大津プリンスホテル

    住所
    〒520-8520 滋賀県大津市におの浜4-7-7

ザ・プリンス 京都宝ヶ池

建築家・村野藤吾

  1. 中庭を囲むホテル棟

    1ドーナツ型の大胆な設計

    • ザ・プリンス 京都宝ヶ池公式Webサイトより「中庭を囲むドーナツ型のホテル棟」

      ▲ザ・プリンス 京都宝ヶ池公式Webサイトより「中庭を囲むドーナツ型のホテル棟」

    京都の北、洛北の閑静な一角に建つザ・プリンス 京都宝ヶ池は、村野藤吾が最後に手掛けた作品です。

    ホテル棟は中庭を囲んでぐるりと円を描く、ドーナツのような形をしています。
    外に向かってはまちの騒がしさを遮り、内に向かっては静かな庭を抱え込む。
    この形が、洛北の落ち着いた空気をそのまま館内に閉じ込めています。

    廊下を歩けば、曲面に沿って窓の景色がゆっくりと移り変わります。

    敷地内には、ほかに類を見ない楕円形の宴会場も。
    9mもの天井高と、森林をイメージしたモザイクタイルの壁面が広がる、王朝絵巻のように壮麗な空間です。

  2. 曲線を描く猫足の家具

    2村野が自らデザインした家具

    • ザ・プリンス 京都宝ヶ池公式Webサイトより「緩やかなカーブを描く猫足の家具」

      ▲ザ・プリンス 京都宝ヶ池公式Webサイトより「緩やかなカーブを描く猫足の家具」

    村野藤吾は、建物だけでなく家具や照明のデザインにも力を注いだ建築家でした。
    ザ・プリンス 京都宝ヶ池のロビーや客室には、村野の手によるインテリアが置かれています。

    なかでも目を引くのが、緩やかなカーブを描く猫足の家具。
    脚のわずかな反りや背もたれのふくらみに、曲線を愛した村野らしさがあらわれています。

    建築とインテリアを別々に考えるのではなく、ひとつづきの空間として設計する。
    圧巻の建築美を放つ外観から、腰を下ろした椅子の座り心地まで。
    同じ思想が細部まで行き届いていることを、滞在のなかで確かめられます。

  3. 日本庭園に建つ茶寮

    3モダン建築の中に生きる和の伝統

    • ザ・プリンス 京都宝ヶ池公式Webサイトより「日本庭園に建つ数寄屋造りの茶寮」

      ▲ザ・プリンス 京都宝ヶ池公式Webサイトより「日本庭園に建つ数寄屋造りの茶寮」

    モダン建築でありながら、和の伝統が息づいているのもこのホテルの魅力です。
    日本庭園のなかには、数寄屋造りの茶寮が建てられています。
    滝の流れる音や虫の声に耳を澄ませながら過ごすひとときは、円形のホテル棟とはまったく違う時間の流れです。

    村野藤吾は、モダニズム建築と数寄屋建築の双方を手掛けた数少ない建築家でした。
    その両方をひとつの敷地で味わえるのが、ザ・プリンス 京都宝ヶ池ならではの体験といえます。

    客室は全室36.9㎡以上。
    洛北の四季を、ゆとりある空間とともに楽しめます。

    ザ・プリンス 京都宝ヶ池

    住所
    〒606-0015 京都府京都市左京区岩倉幡枝町1092-2

まとめ

有名建築家が手掛けたホテルに泊まるならプリンスホテル

建築を目的にした旅は、外から眺めて写真を撮って終わりではありません。
朝の光が差し込むロビー、夕暮れに伸びる影、夜の静けさ。
泊まってこそ味わえる時間が、その建物を深く記憶に残してくれます。

村野藤吾のザ・プリンス 箱根芦ノ湖とザ・プリンス 京都宝ヶ池と伊豆長岡温泉 三養荘、黒川紀章の下田プリンスホテル、丹下健三のびわ湖大津プリンスホテル、池原義郎の中国割烹旅館 掬水亭。
いずれも展示物ではなく、いまもお客さまを迎え続けている現役のホテルです。

有名建築家が手掛けたホテルに泊まるなら、昭和から受け継がれてきた建築がいまも生きるプリンスホテルを、旅の候補に加えてみてください。

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絶景はプリンスにある。

絶景はプリンスにある。
五感で感じる絶景体験。

大自然のパノラマに息をのむ客室。
ありえないほど近い星空に癒やされる温泉。

幻想的な夜景に酔いしれるディナー。

ここでしか味わえない「絶景体験」の数々が、
あなたの旅を特別なものに。
さあ、感動の一番近くへ。
一生忘れられない景色と出会おう。